12 それでも君が好きだったと

 静まりかえった暗がり、木の根元に寄り添うようにして屈み込んだ小さな背中を見つけた。虫の声が響くだけの夜に、息を殺すように身を潜める姿に幸村は目を細める。彼もまた、極力音を立てないよう静かに彼女に近寄った。しかし気配で気がついたのか、は小さく体を震わせたが、膝を抱えそこに顔を埋めたままにそれ以上の反応は見られなかった。大方、不二か誰かと勘違いしているのだろう。メモを残したにも拘わらず彼女を探しに来る人間なんてそういない筈なのだ。だから、きっとは、不二が探しに来たのだとでも思っている。そう思い至ると、幸村は途端に腹が立ってきた。今この場に居るのは幸村精市その人なのに、このという人間は彼を見ようともしない。これまで避けようがないくらいのよく通る声で名を呼んできたのは一体何処の誰だか分かっているのか。脳裏から離れなくなるほどに笑顔を向けてきたのは誰だというのか。
 声をかけずに、容赦なく下がっていた腕を掴んでぐいと引っ張り上げる。すると自然と俯いていた彼女の相貌も顕わになった。彼女の瞳に幸村の姿が映り込むと同時に、息を呑む音が耳に届く。しかし思わず目を見張り言葉を失ったのは幸村も同じだった。それほど彼女の表情が予想外だったからだ。だって、幸村は知らない。
泣いている、なんて。

「幸村、君」

 笑わないというものを知ったのは、忘れもしない、あの一歩間違えば交通事故が起こっていた通学路だ。あれほどに必死な顔は、それまで満面の笑みだけを見せてきていたが故に、何よりも新鮮だった。必死さだけに、ありのままの彼女の姿を見た気がした。発見だ、そう思った。それだから、もっと知ってみたいと思ったのだ。彼女に笑顔以外の表情があって、それを確認してみたいと思った。だから此方から声をかけてみれば、なんと彼女は手のひらを返したように幸村に背を向け、避けるようになったじゃないか。彼女を後夜祭のダンスに誘った時の彼女のあの蒼白さは今でも苛立ちにも似た不快感と共に思い出される。それを思い出しかけて、しかし眼前にあるこの表情を見ていると苛立ちよりも戸惑いが勝った。
 流れるような涙ではない。ドラマのように雫が頬を伝ってゆくなんてこともなく。大粒の雨でも降り注いだような、そんな頬の濡れ方をしていた。それが綺麗だ、とは思わなかった。ああ、綺麗ではない、計算され尽くした美しさではない。何故そんなことを思ったのだろうか。計算され尽くした何か。そこで理解した。そうだ、彼女がこれまで見せてきていたのは、ある種計算され尽くした笑顔であり、仕草であり、行動だった。
 何故彼女が泣いているのかなんて、それこそ幸村が知りたい。そもそもという人物に興味を持ちだしたのが本当に、本当にごく最近であったから、彼自身はのことを殆どと言って良いほど知らないのだ。
 逆に、彼女は幸村のことを分かっているのだろう。何せ中学からの5年以上ずっと幸村のことを見てきたのだから。考えてみれば、いや考えるまでもなく可笑しな事だった。5年も、顔と名前が一致して、それが日常の一部と化すまで彼女という存在を認めていたのに、その彼女についてはよく知らないのだから。幸村はその辺りに居る立海生よりも知らない。そんな風にすら思う。否、ともすれば幸村は、彼女に「意識しないことを意識」させられていた。
 以前なら、彼女の存在を意識する前であればあの食えない詐欺師じゃあるまいし、そんなことが「出来る筈がない」と一蹴してしまえただろう。しかし幸村が彼女に「気付いた」瞬間からその根拠のない言葉は瓦解した。全ては仕組まれていたことで、幸村はこの5年以上の月日を彼女の手のひらで転がされてきたとでも言うのか。笑えた。そして転がされてるのは、もしかしたら、今も。
 込み上げる感情に取りあえずは蓋をしながら、幸村は考えた。この膠着した状態を如何にして打開すべきか。どうして泣いているんだい? こんな所に居たら風邪をひくかもしれないよ。普段の幸村だったら、そう尋ねていたことだろう。けれど今はそんな言葉も出なかった。幸村が黙り込んだままでいることに痺れを切らしたのか、が躊躇いがちに口を開いた。

「あの、手」
さんは何で俺のこと避けてるの」

 続く言葉が「離して」であることくらい容易に想像がつく。そして彼は手を離すつもりは毛頭無かった。だから強引に話を逸らした。

「俺、したかな、さんに嫌われるようなこと」

 は瞳を揺らして地面へと視線を下ろした。ほら、また。彼女は幸村を見ない。苛立ちを増幅させる。

「無視するなよ」
「幸村君は、何もしていないよ」

こんな風に、責めるように彼女に接したことは無かった。接触も数回、なのに自分は今に対して刺々しい態度で接している。自覚はある。でも軌道修正なんて効かない。きっとそれは彼女が幸村を見ないから。

「何もしてないのに、何で俺が避けられないといけないんだよ?」
「ごめ」
「俺が聞きたいのは謝罪じゃない」

 を困らせているのなんて百も承知だった。困らせているのは自分だったが、この場合更に自分自身も困惑の中に居たのだから余計に始末に負えない。一体何を言わせたいのか幸村にも分かっていなかった。こんなのはただの八つ当たりだ。

「――ねえ、俺の気持ちは無視するの」

 気付いた感情。渦巻く嫌悪。収まらない苛立ち、そして焦り。今まではテニスさえあればすべてそこで昇華出来たのに、全部彼女が悪い。そうだ彼女が悪い。勝手に幸村の領域に佇んでいるお前が悪い。そうやって自分を説得して、幸村は今まで口にせず飲み込んできた言葉を投げつける。弾かれたようにの顔が上がった。幸村は最初、それが彼女にとって予想外の言葉であったからと思ったが、怯えたような表情を見てどうやら違うようだと思い直した。それでも滑り出した言葉はもう止まらなかった。

「俺の気持ちなんて関係ないの」

 重ねれば、彼女からどんどん怯えの表情が消えてゆく。そして怯えから、悲しみへ、悲しみから後悔の色へと。

「……何で俺を見ないんだよ」

 結局、幸村の言いたい言葉は、そこに集約されるのだろう。ただ一人に見られていないことがこんなにも煩わしいだなんて、それも、に。以前の幸村だったらそんな自分を指さして笑うだろう。けれど今は違う。俺だけを見ていれば良い。今までがそうであったように。けれどそれが出来ないというのなら、此方にも考えがある。

「いっそのことさあ。俺のこと、嫌いなら、嫌いだって言いなよ」

 そうしたらもう、何も言わないから。そう言いつつも、ぎり、と握りしめられている手首はきっと酷く痛むのだろう。その位力を込めているのだから。それでも、例えば今ここでが暴れ出したとしても、この手を離すつもりはなかった。逃すつもりは毛頭無かった。
 震えが直に伝わってくる掌。眇めた視線の先で、は小さく首を振っていた。それは、幸村の言葉に対する否定なのか、それともそれ以外の何かを否定したいのか。前者であれば良い。そう思いながら、幸村はが口を開くのを待った。最早引けはしないのだ。いっそ視線で全て伝われば良い。そう思う位に、幸村は彼女を睨めつけた。私は、とは言いかけて、その後に続く言葉もなく徐に口を開閉させる。言いなよ。幸村は再度催促する。

「私は」

 最早、から抵抗の意思は見受けられなかった。離して欲しそうな素振りもなかった。の瞳を逃がさないとばかりに見つめてくる幸村の視線に、耐えきれなくなったかのように、は続けた。

「好きだ、よ」

 好きだよ、幸村君が。それこそまるで血を吐くように。――一体何の許しを請うているのかと問いかけたくなる程に、一言一言、彼女の告白は、苦しげな想いを隠しきれないままに幸村の耳へと届いた。好きだよ。行動には示していても、彼女が幸村に対しては頑なに口にすることのなかった言葉。
 苦しい。なんてそんなことをは言わない。それでも、苦しい、苦しい苦しい苦しいと彼女の全身が語っていた。吐き出してしまうその行為すら苦痛だと喘いでいた。幸村には何をそんなに苦しんでいるのか分からない。けれど確実にその原因は自身にあるのだ。

「でもっ、ごめん、今まで散々五月蠅くしておいて、今更自分の勝手だって分かっているけど、私幸村君のこと」

 続きは言わせなかった。腹が立った。続く言葉だけじゃない。予想以上に細い手首も、目尻に涙の残った瞳も、苦悶に満ちた声ですら。

「本当に、さんは勝手だよね」

 こういう時に口を塞ぐのは掌ではなく、唇が正解だったのか? そんな道理は知らない。そんな気障ったらしいこととっさに出来なかった。でも何もかも上手くいくことの何が楽しい? 何でも勝利は大切だろう。
 けれど幸村にとって上手くいかなければならないのはテニスだ。そうでないなら、計算なんていらない。従順に口を噤んだに目を細めながら、幸村は口元が歪んでいくのを止めることが出来なかった。

「俺のこと勝手に好きになって勝手に応援して勝手に視界に入ってきて、それで俺がさんを見たらまた勝手に逃げてくって何だよ。ふざけるのも大概にしろよ」

 が何かを言いかけた気配はあったが、生憎彼女の口は幸村によって塞がれている。故に口を挟むことは出来なかった。幸村を映すゆらゆらと瞳が定まらないまま揺らいでいる間にも、幸村の批難は止まない。そうだ俺を見れば良い。幸村はその瞳を睨み付けた。
 とどのつまり幸村はこれ以上こじれるのが怖かったのだろう。どうにかして好転させたいが為に、迂闊に動けなくなっていた。臆病になっていた。どうして好転させたいかなんて、そんな野暮なこと。畏れているのだ、二人して畏れている。方向性は違うものの、何かが変わってしまうことに。変わってしまった先に、今の自分が自分でなくなってしまうのが恐ろしくて。これまでの自分を否定することになることが、たまらなく怖くて。
それでも、留まり続けることが出来ない。

「俺は今までさんの勝手を容認してきたんだから、さんも受け入れるべきだろ」

にっこりと微笑んだ幸村に、は面食らったように大きく目を見開いた。やっと手を離され口を開くことを許されたは、その驚いた顔のままその言葉を耳にする。

「俺はが好きだ。だから、逃がすつもりはないよ」



 少し時は遡る。それに最初に気が付いたのは、幼馴染みである不二周助ではなく、幸村精市の方だった。夕飯の時から、の姿を見ない。何だかんだ思いながらも、時間が許す限り、幸村は彼女を視界の中に留めておくよう務めていた。それが夕飯のときにどんなに探しても彼女の姿を見つけられず、夕飯が終わってから八木にも聞いてはみたものの、八木も彼女を夕飯に誘おうと部屋を訪問した時に返事がなかった為に仕方が無く一人で食堂まで来たらしい。これは流石におかしいのではないか。幸村は八木と、話を聞いていたらしい柳と一緒に、当の本人の部屋までやってきた。改めて八木がノックと共に彼女の名を呼んではみるが、中から返事が返ってくることはない。何かあったのではないか。幸村の顔が険しくなった所でやっと登場したのが、不二だった。

「あれ、三人揃っての部屋の前で、何してるんだい?」

 幸村は険しくなった顔をそのままに不二の方へと顔を向けた。元々、不二とはU-17合宿でも部屋が同じになったが、そこまでそりが合わないということはなかった。寧ろどこか近しい物を感じてすらいた。しかし、彼が彼女のことを「」と呼び、また彼女が不二のことを「周助」と呼び捨てているのを目にした時にそれは敵愾心へと姿を変えた。確かに、二人は幼馴染みなのだから、そういう風に名前で呼び合うことがあるのかもしれない。しかし理屈ではないのだ。彼女のことを「」と呼んでいることも、彼女が「周助」と不二の名前を呼び捨てていることも、二人が特別な関係であることの象徴であり、見せつけられていると強く感じたのだ。特に不二の方はどうにも意図的にそれを行っている。自分は誰よりもと仲が良いということを態度で示してくる。それに食ってかからないでいられるのは、まだが不二に対してかなり嫌悪感丸出しで接しているからだ。

さんの姿がさっきから見えないから、探してるんです」

 何を言おうかと考えるよりも先に、八木がさらりと理由を口にする。すると不二はああ、と何てこと無いように微笑むと、ちょっと良いかな、と彼女の部屋のドアの前に割り込んできた。そしてすっと屈んだかと思うと、「ああ、やっぱりあった」と言いながら立ち上がる。その指にはさっきまでは無かった、小さなメモが挟まれていた。それはどうも、ドアの下の方に挟まっていたらしい。

がこういう場所で黙って何処かに行くことはないから、もしも何処かに行くとしたら何かしら残していくだろうと思ってね。……ほら」

 二つ折りにされていたメモ用紙を開くと、「散歩に行きます。○時までには戻ります。」とかなりの走り書きで書かれた文章が姿を現す。確かにこれで謎は解決した訳だが、幸村の心は晴れなかった。それもそのはず、今もまた、不二との仲の良さを見せつけられたようなものだったからだ。取りあえず表面上は「そうか、分かった」と頷いてはみたものの、どうにも納得がいかない。柳が何やら「そのメモ、確認したいことがある。貸してもらえないか」と言っているのを尻目に、幸村はその場を去ろうと歩き始めた。すると暫くしてから柳が後ろから追ってきて、丁度外に繋がる1階に降りようとした所で肩を掴まれる。

「待て精市」
「何だよ、蓮二」
「今からを探すつもりなら、先に話がある」

 幸村のしようとしていることなど柳にはお見通しだと言うのだろうか。仕方なしに振り返ると、珍しく試合以外で開眼している柳と目が合ってこっちが面食らってしまう。話って何、と尋ねると、手早く終わらせるから取りあえず俺の部屋に来いと手を引かれ、降りてきた階段を引き返す。参謀に手を引かれる部長の図というのが面白いのか、2階の廊下で雑談をしている他の部員達はちらちらと此方を見てくる。それに笑顔で返せば、物凄い勢いで顔を逸らされた。こんなにも強引な柳も稀だ。余程さっきの髪に何か気になる点でもあったのだろうか。招かれるまま柳の部屋に入れば、来た時のままなのではないかと思えるほどに整えられている室内に出迎えられる。座って待っていろ、との言葉通りにベッドに腰掛けてバッグの中の何かを探っている柳の後ろ姿を眺める。

「これを見てみろ」
「これって、あれだろ、ずっと蓮二の鞄に入れられてきたテニス部への助言メモ」
「ああ。そしてこれがさっき、不二から借りたメモだ」

 差し出された一方、複数枚あるそれは幸村も何度も見た「謎の人物」からのメモだ。そしてその上に重ねられたのは、先程不二が見つけた、の書き残したメモ。それが何か、と見上げると、「筆跡をよく見てみろ」と言われたため、受け取って改めて双方の筆跡を確認してみる。まじまじと見比べてみて、ん? と思わず目に力が入った。

「……え? これって」
「ああ。のこの筆跡と、これまでテニス部に向けて書かれてきたメモの筆跡は、重なる部分が多い」
「つまり、これまでこのメモを書いていたのは、さんってこと? でも蓮二が前に、さんは違うみたいなこと言ってた気がするんだけど」
「俺の推測ではが正体である確率が一番高かった。ただ、今の今まで断定出来る要素がなかった」

 柳の口から聞かされたのは、平素の彼女の文字が決してこのような走り書きであったことはなく、丸々と女の子らしいものであったということだった。そして、もう一つ。幸村が入院中に誰かから受け取ったと思っていたあのスケッチブック、あそこに書かれていた筆跡もこのメモと酷似していたという。
 何だそれは。理解した途端幸村は突然恥ずかしくなって片手で顔を覆った。顔に熱が集まってくるのを感じる。じゃあ、何だ。今まで漠然と恩を感じていた相手は、呆れるほど近くに居たということなのか。異世界人がどうのとかちょっと楽しそうにしていた赤也辺りはがっかりするかもしれない。等と逃避してみたが、結局思考が戻ってこなければならないことに変わりはないのだ。

 彼女は、確かに幸村を応援していた。そして幸村だけではなく、同時にテニス部全体の応援もしていた、決して自分とは口にせずに。本当に彼女は幸村を、そして彼の打ち込む「テニス部」を見つめていたのだと自覚した瞬間、この上がってくる熱の正体に気が付いてしまった。こんな時に限ってあの脳天気なマネージャーの言葉が蘇る。「幸村はさあ、その、さんのことが好き、なんだよね?」だなんて。
 結局彼女がどんな人間なのか、深い所についてはどうしても関わった日が短すぎる幸村には雲を掴むようなものである。これ程までに他人を分からないと思ったことは無いのではないか。人を好きになるのにこんなに相手のことが分からなくていいのか精市と頭の中の自分に問いかけられる。仕方ないじゃないか。幸村は反論した。だって彼女が俺を見ないのは嫌なんだ。彼女に応援されている事実だけで、なんとでもなる気がしてくるんだ。どうしても、彼女が幸村のことを認めてくれないと、腹が立ってくるんだ。
 すっと立ち上がった幸村を見て、「行くのか」と尋ねる柳に「ああ」と答えて、彼にメモを手渡す。柳は「酷似している」とはぼかしたけれど、柳がそう言うのだから、間違いないのだろう。

「蓮二のお陰でさんを諦めない決心がついたよ」
「諦めるつもりだったのか?」
「さあ。でも俺そんなに堪え性ないし」

 そう言って笑ってみせれば、確かにな、と頷かれた。そこはお世辞でも否定する所だろ。文句を言うと、馬鹿を言うなと斬り捨てられる。柳らしくない強い言葉だ。指摘をしつつ肩を竦めると、柳は少しだけ眉尻を下げてから、困った風に笑った。そうかもしれないな。肯定の言葉にふとある考えが思いつく。

「もしかして、さんが関係してるから?」
「……そうだな」

 少しだけ、沈黙が落ちた。先に動いたのは柳で、此処に連れてきた時と同様に強引に俺を部屋の外に追い出す。その直前に小声で言われた言葉に、幸村は反抗するのを止めて、柳の部屋を振り返らないまま歩き出す。建物を出てからは、堪えきれずに走り出した。

――諦めないなら、最後まで手放すなよ。

「分かったよ、蓮二」

 忠告も。お前がどんなに彼女を大切に思っているのかということも。
 ここで彼女を手放したら、きっと幸村は人生で重きを置かなければならないものを失うことを確信していた。彼女の存在が幸村にとって如何に重要であるか気付いたのだ。諦めてしまったら、この先ずっと、失った物を後悔したまま生き続けることになる。そんなのは耐えられない。今この時、幸村を避けている彼女が、幾ら自分から逃げようとしても逃がしてはならないのだ。少なくとも、幸村には、彼女のしてきたことの責任を問う権利があるのだ。その問いがどんなに彼女のことを傷つけることになったとしても。

「手放せないんだ」

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