後ろの正面王様


 ヒウンシティでアイスを買って、そこらをぷらぷらしながら食べていたら、何とも言えない趣味をした服を着た女性に話しかけられた。

「ええーっ、プラズマ団っすかー」
「そうよ、ポケモンを解放するだけの簡単なお仕事、昼寝は無いけど三食出るわ!」

 ポケモンを解放するだけの簡単なお仕事って簡単じゃないだろそれ、と脳内で突っ込みを入れつつ、取り敢えず笑顔で「遠慮しておきます」と返すと「な、何で!?」と驚かれた。いや、何でってそりゃ、怪しすぎるからさプラズマ団とやら。あとプラズマ団になったらその服着なきゃいけないと思うと嫌すぎる。私には絶対に似合わない感じの服だ。冗談じゃない。生憎食い物に困るほど金欠でもない。これでもバトルは今まで負けなしなのだ。

「話は終わりましたね、んじゃ私はこれで」
「ま、待って! せめてN様とお話ししてみて! そうすればプラズマ団がどんなに素晴らしいか分かるわ!」
「すみません教祖様と話す時間はないんでー」

 引き留めてきた手をやんわりと払い背を向けようとした、そんで背を向けた瞬間何かにぶつかった。どうやら人のようだ。だがしかし今の今まで気配を感じなかったのはどういうことなの。やだ怖い、俺の背後に立つな!
 よろよろと離れてぶつかった人を確認すると、なんか緑の髪でマッギョのような目をした青年がいた。え、普通に怖い。

「えっ、N様!」

 そしてこの青年がかのN様らしい。やべえ更に怖い。プラズマ団怖い。こんなちょっとヤバそうな人と何を話せと言うんだ。そうだこんな時には逃げるが勝ちだ、そうと決まればはい、思い立ったが吉日! 逃げるに限る!

「――キミのポケモン、さっきから随分と威嚇しているね」
「は、あ?」

 と、思ったその時、ヤバそうな兄ちゃんがそう声をかけてきた。なんか勧誘してきたプラズマ団のお姉さんはうるうるとした目で彼を見ている。何だ。私のポケモンが何だってんだ。

「てめえ俺たちのオーリに手ェ出したらマッギョ並みに平らに潰してやるよ……? 凄いことを言うね」

 何を言っているんだこの兄ちゃん本当に、ヤバそうなんてもんじゃないヤバいのかもしれない。背筋を汗が伝ってゆく。と言うかいつ私の名前を知った。ストーカーなのか。気持ち悪い。

「あ、あなた何なの」
「N様はポケモンの声が聞こえるんですよ」

 私の疑問には兄ちゃんではなくお姉さんが答えてくれた、が、何だそのいかにも怪しそうな文句!! あなた絶対騙されてるでしょやっぱりプラズマ団って宗教団体だったんだマジ怖い! そして真面目に信じちゃってる信者怖い!

「わ、私宗教興味無いんでええええ!!」

 慌ててウォーグルを出すとそれに飛び乗り、急いでその場を去った。待ちかまえていたようにすぐに飛び立ってくれたウォーグルが頼もしい。ありがとう私の愛しのポケモンよ!

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